
#1 ウイスキーってそもそも何なの?
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《BARのススメ》#1
ウイスキーってそもそも何なの?
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はじめに
「ウイスキーって、いったい何なんだろう?」
そう思ったこと、ありませんか?
わたし自身、BARで働きはじめたころに、
「名前がたくさんあってよく分からないな」と感じていたひとりです。
バーボン?シングルモルト?スコッチ?
聞いたことはあっても、どう違うのか説明できない…。
でも少しずつ知っていくうちに、
ウイスキーは“難しいお酒”じゃなくて、
“知れば知るほど楽しくなるお酒”なんだと気づきました。
この「ウイスキーのススメ」では、「ウイスキーってそもそも何なのか?」という基本のところから、原料・製法・種類の違いまで、できるだけ分かりやすくまとめていきます。
初心者の方には「ウイスキーって、そういうことか」と腑に落ちるきっかけに。
すでにウイスキーが好きな方にも、「あらためて基本を整理できた」と思ってもらえるような内容を目指しています。
それでは、ウイスキーの世界を少しずつ紐解いていきましょう。
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1. ウイスキーは「蒸留して、熟成させるお酒」です
ウイスキーは、ビールやワインとはちがって「蒸留酒(じょうりゅうしゅ)」という仲間に入ります。
ざっくり言うと、
• 穀物を発酵させて
• アルコールを取り出して(=蒸留)
• 木の樽で寝かせる(=熟成)
この3ステップでつくられるお酒です。
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2. 原料は「穀物」──味の個性を決める大切な要素
ウイスキーの原料は、大麦・トウモロコシ・ライ麦・小麦といった穀物です。
これらを粉砕して糖化・発酵させたあとに蒸留し、樽で寝かせてウイスキーになります。
使われる穀物によって、仕上がりの香りや味わいは大きく変わってきます。
•モルト(大麦):香ばしく、麦の風味が際立つ
•コーン(トウモロコシ):甘く、まろやか
•ライ麦(ライ):スパイシーでキレがある
•ウィート(小麦):柔らかく、なめらか
たとえば「バーボン」はコーンが主原料で甘みがあり、「ライウイスキー」はスパイシーでシャープな印象。こうした“原料の違い”が、ウイスキーの個性を形づくっているのです。
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3. ウイスキーの色は「樽」がつけたもの
ウイスキーといえば、あの美しい琥珀色。
でも実は、蒸留されたばかりのウイスキーは透明です。
色がつくのは、熟成の過程で木の樽から色素が移るから。
つまり、あの深い色合いは、年月と樽がつくり出した“時間の証”なのです。
さらに、香りや味も樽によって変化します。
オーク樽のバニラ香、シェリー樽のフルーティーな甘さ…。
熟成する環境や樽の種類が、ウイスキーの個性を大きく左右します。
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4. 「名前が多くて分かりづらい」のはなぜ?
スコッチ、バーボン、アイリッシュ、ジャパニーズ……
ウイスキーって、とにかく名前がたくさんあって、ややこしいと思ったことはありませんか?
でも、その理由はとてもシンプル。
「どこで」「何から」「どうやって」作られたかによって、名前が変わるだけなんです。
たとえば:
•スコットランドで作られたら → スコッチウイスキー
•アメリカでトウモロコシを主原料にすると → バーボンウイスキー
•日本で作られたら → ジャパニーズウイスキー
名前のルールや分類の仕組みを知れば、「あ、そういうことか!」とすっきり見えてきます。
つまり、名前が多いのは“個性が豊か”な証拠。
ウイスキーの世界には、さまざまな土地の風土や文化が詰まっているんです。
(このあたりは、今後の記事で詳しく紹介していきますね)
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まとめ|ウイスキー=熟成する飲み物
私が働く《BAR五》のマスター、西川大五郎さんは、ウイスキーをこう表現します。
「ウイスキーとは、熟成する飲み物」
穀物を原料に、発酵・蒸留し、木の樽でゆっくりと寝かせていく。
その過程で、無色透明だった液体は、年月とともに琥珀色へと姿を変え、香りや味わいに深みが生まれていきます。
ウイスキーは、時間と自然、そして職人たちの技術によって、少しずつ“育っていく”お酒。
何十年という歳月をかけて完成するその一杯には、たくさんの手間とロマンが詰まっています。
この《ウイスキーのススメ》では、これからウイスキーの産地や種類の違い、おすすめの銘柄、BARでの楽しみ方なども、少しずつ丁寧にご紹介していきます。
奥深くて、複雑で、それでいてどこか自由なウイスキーの世界。
その入り口として、この記事があなたの「第一歩」になれたら、とてもうれしく思います。
次回は、「ウイスキーって、どうやって作るの?」をテーマに、製造工程をじっくり紐解いていきます。